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2019.11.29
九州民家大学 シリーズ2 建築環境学入門③

11月16,17日と第3回目に参加するため、またまた福岡県久留米市へ…

16日は「日照と住居」について、個別の地域(今回は久留米)の「太陽高度」と「太陽方位角」から「等距離射影図」をみなさんで描いてみようという演習からでした。具体的な紹介は割愛しますが、建築の設計に応用する際に、その地域における「日射遮蔽」の範囲をデザインできるようになります。リクツを理解するには、手を動かすことも重要…
住宅において建物躯体の一定の断熱・気密を確保するとともに、窓から侵入する日射をどのようにコントロールするかはとても重要な要素だと宿谷先生はたびたび強調されますが、必ずしも厳密に定量化することを重視するのではなく、皮膚感覚と実際にはじき出される数字がそこそこ一致するように訓練していくことが、設計者にとって必要なのだと理解しています。

17日は「光と環境」というテーマ。ずばり、光=電磁波=放射。電場と磁場の発生について、アルミと紙の筒に同時に磁石を落とす実験を通して、磁場の「力」を実感しました。また、光を感じるとはどういうことか、ヒトの目と脳の仕組みについて講義いただきました。興味深かったのはヒトの視細胞100に対して、脳へ伝達する視神経細胞は1、つまりある程度情報が丸められ圧縮されているということ、言い換えれば実は“見えていない”状況も、脳は“見えている”ようにだましているということです。
照度と明るさの知覚については、例えばオフィスの水平面照度の基準値は1960年前後からこれまでに、150lxから750lxまでナント5倍に膨らんでいます。しかし、それだけ大きな差があるということは、住宅においても居室と廊下との光の関係などをうまくデザインする余地は充分にあるということです。実際に計測すると実感がわくのですが、机の上で事務作業するのには750lxもの照度は必要ありません。

なお、日本のオフィスビルの10%を平均照度750lxから150lxにすると、福島原発3基はいらなくなるそうです。
我々は3.11以降、原発抜きで一定期間過ごして来ました。本質を見誤らないように、また感覚と実際の数字との比較を通して、常に“思考停止に陥っていないか”を確認しつづけていきたいと思います。

次回12月14,15日はいよいよ「熱と環境」です。